「いつもありがとうございます。
来年もよろしくお願います 」
「 いいえ、こちらこそよろしくお願いいたします 」
この時期になるとお客様との間で
繰り返される挨拶だ。
年が明ければまた、
「 今年もよろしくお願います 」
そう、お客様は言ってくれるだろう。
今はそう言われる度に涙が出そうになる。
私は今の仕事に就いて17年になる。
この仕事を最後に65才まで働きたいな、
いや、働けると信じていた。少し前までは。
社長に職場のスタッフ全員が呼ばれて、
「 管理委託を切られて来年3月で
ここから撤退になりました 」
そう告げられた。
別のお寺の管理下に入ることになった。
年内に向こうに返事をする為に
今後どうするかを選んでくれという。
選択肢は3つ
① 今の会社を辞めて、新しいお寺で今の仕事をする
② 今の職場から他の店舗に行く
③ 今の会社を辞めるし、新しいお寺にも雇ってもらわない
全員が今の会社を辞めて別々の道に進む事を選んだ。
新しい管理寺は悪い噂しか聞かないし、
今の会社に残りたいと思ってみても
行く所が無いのが分かっている。
人員の空きがないのだ。
なのに、
残ってもいいと言う社長…。
もういいです、17年も雇ってくれて感謝しかないです。
私達の為に頭を悩ませ無いで。
心の中でそう呟いた。
3月まで頑張ろう、精一杯。
そう思いながら、お客様と話す度に
胸が締め付けられる。
今はまだここを去ることを伝えられない。
何も決まっていないから。
でも 分かっている事がある。
サービス面で確実に悪くなるのは間違いない。
そろそろ命日だからお参りがあるかな…。
気持ちよくお参りしてもらえるように掃除をした。
納骨のあと、
ホッと安堵したような顔が嬉しかった。
お参りの度に少しずつ元気を取り戻す姿も。
供養祭で一緒にお経を唱えたことも。
17年間の出来事が思い出される。
「 来年もよろしくね 」
… 来年はもうお世話ができません。
ごめんなさいね。
いつもの様に姿が見えなくなるまで
見送りながら深く頭を下げた。
さて、私はこれからどうしよう。
心にぽっかりと穴が空いた。
暫くは休んで考よう。
時の流れに身を任せ
そんな歌を思い出した…。
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いつもありがとうと、お客様に頂いたもの。
重いのに持ってきてくれた気持ちに感謝しかないよね。