もうすぐ広島も桜が咲くだろう。
桜が満開になる頃に私は、
17年勤めた職場を去らねばならない。
それまでに会いたい人がいる。
今日は、その人のことを書こうと思う。
おじいちゃんがついて来る。
笑いながらついて来る。
仕事の邪魔をしたら悪いからと言いながら。
うちの職場に隣接している公園で
一人でお花見をしたけど寂しいと言う。
手にはビールの空き缶とコンビニ弁当が。
うちにお参りに来たあと、
公園でお花見をしていたら、
桜の下で奥さんを思い出したんだとか。
そんな寂しい帰り道、
「こんにちは、桜が綺麗に咲いてますね 」
私が声をかけたものだから、
急に涙目になって喋り始めた。
お母ちゃんが~
お母ちゃんが~
男が一人残されると
こんな感じになるのかも。
自死したこの人の奥さんは心の病だった。
だから、 悲しくて、無念で
いつ死んでもいいんだと言う。
残された者のやり切れない想い…。
自分の胸が熱くなるのが分かる。
私も同じ経験があるから、分かりますとは
言えないけれど。
楽しいことは共有できても
悲しみは人それぞれで、
簡単に共有できるものではないから。
聞いてあげるしかできないよね。
「そんなこと言わないで。
私もまだ10年ここで勤めますから。
◯◯さんの納骨式のお手伝いは嫌ですよ。
また元気なお顔を見せてくださいよ」
「じゃあ 10年生きてみるか 」
「そんなこと言うなら20年勤めようかな」
「20年かぁ、俺は20年は無理かな。
孤独死は間違いないし… 」
「あら、嫌だ。私も80近いわ」
そう言いながら二人で笑った。
自分の最期が見えて来た時、
私の側に誰かがいてくれるだろうか。
それは今までの生き方と、
これからの生き方で決まるのかもしれない。
今を懸命に生きて
ご縁を大切にしていこう。
桜の花の下でそう思った。
あれから1年…。
おじいちゃんは、あの時の会話なんて
覚えていないかもしれない。
でも、できる限りここにいて
会えた時は話しを聞いてあげたかった。
『3月末でここを辞めることになりました。
今までお世話になりました。どうぞ、お元気で』
あと2週間もないけれど、
どうか、桜が満開になる頃に
直接ご挨拶ができますように…。